チェンソー
チェンソー、始動するが回転上がらず。インレットスクリーン(キャブ内部)の汚れ
我家から隣の市にある材木店様からのご依頼です。
新ダイワのE1145S。

症状:チョークを引けばエンジンは始動し少しふけ上がるが、チョークを戻すとエンジンが停止。
お客様は取扱説明書を見ながらHスクリュー、Lスクリューを微調整して見たが全く症状が改善されない、とおっしゃっていました。
マニュアルをちゃんと読まれているお客様とは話が早くて助かります。
この機種の取説には、全締め状態から1回と1/4戻しと記載されていました。
プロ機にはNeedleの調整の仕方も記載されている事が多いですが、慣れない方はむやみに調整されない方が良いでしょう。

チョークをした時だけ少しふけ上がる、という事は燃料の供給が正常ではない事が一番考えられます。
燃料フィルター→燃料ホース→キャブレターと診断をしていくと、 エアーフィルター付近は綺麗に清掃されていましたが、キャブの裏側にはかなりの木屑が溜まっていました。

キャブを分解すると、メタリングダイヤフラムの裏側にも汚れが。

分解を進めると、ポンプ室側に取り付けられている 「 インレットスクリーン」という、フィルターが真っ黒になっていました。
こんなに真っ黒な状態なスクリーンはあまり見ません。酷い状態です。

燃料が通る順序は
燃料タンク→燃料フィルター→燃料ホース→キャブのポンプ室→キャブのメタリング室→キャブのベンチュリー部→エンジン内部
というのが、大まか流れです。

キャブレター内部は大変複雑で、色々な穴が設けれており、どこかが塞がると当然、不調になります。
おそらく今回は、このインレットスクリーンが燃料の通行を阻害していたのだと思われます。インレットスクリーンが無ければ、汚れが大事な部分へ通過してしまっていたという事なので、大事な役割を果たしていると言えます。

キャブレターを分解洗浄し、インレットスクリーンとメタリングダイヤフラム+ガスケットを交換させて頂きました。
※インレットスクリーンはキャブコンディショナーやコンプレッサー等で清掃して再利用しても構いませんが、汚れが酷いので今回は交換です。
組み上げ調整すると快調に動く様になってくれました。
この機種はシンプルでメンテナンスがしやすい機構ですが、エアーフィルターの形状にやや難があるのかなと感じました。
その他に問題は無いので、これでメンテナンス完了です。
キャブレターの内部構造図をWalbroさんのWebページから拝借し主要なパーツを右側に記入しました。キャブ内部はこの様に複雑です。

Walbro社のWebページで公開されております。興味が有る方はこちらからどうぞ→Walbro社サービスマニュアル
上の図の5番が今回ボトルネックだったインレットスクリーンが有る場所です。
キャブの分解は、熟練の方に教えてもらいながら一度やってみた方が良いかと思いますが、最近は技術情報や良い動画が沢山公開されているので、敷居が下がって来ましたね。
リコイルスターターのスプリングのはめ方
チェンソーや草刈機(刈払機)等の小型農業機械にはリコイルスターターという物が付いています。始動する時に使うスタートロープが付いた部分ですね。

このリコイル部のトラブルで多いのは、スターターロープ切れです。その他パーツが劣化してロープを引いても空回りする、とか、逆にロープが絡まって引けないとか。
機体により構成パーツが異なりますので、症状はさまざまです。
今回ご紹介するのは、スパイラルスプリングという部品の取り付け方です。本来はスタートロープの交換だけをしたかったのに、分解の過程で誤ってハズれてしまった!という時の対処方法です。
このスプリンがバラっとなった瞬間って本当嫌な気分になるんですよ(笑)

機種によっては、カバーやビスで固定されていて故意ではなければハズれないようにしてあるタイプも有るのですが、上の写真の様にバラバラになってしまうタイプの物も多いです。
これを元の様に再セットするのはなかなか難しいです。このMS171の様な形状であれば、手が入りやすいので比較的簡単ですが、物によっては泣きそうになります。
そいういう時の参考になればと思い、動画を作ってみました。↓
お役に立てれば幸いです。
チェンソーのスプロケット交換
エンジンの調子は良いが、実際に作業しようとするとチェーンの動作がおかしい、切断する力が弱い、という症状で運ばれてきました。
診断するとスプロケットが酷く消耗している事がすぐわかりました。
スプロケットとはエンジンの回転をソーチェンへ伝える役割を持つ重要なパーツです。
下の写真の遠心クラッチの裏側に取りつけられており、歯車の様なイメージでソーチェンを回転させます。
この機械から取り外したスプロケットが写真下の(右)です。取り寄せた新品(左)と比較すると劣化具合が良く分かるかと思います。ソーチェンのドライブリングが当たる箇所が酷く摩耗・劣化しています。
私はここまで深くえぐられた(赤丸部)スプロケットは初めて見ました。これではいくらエンジンがしっかりと仕事をしてもチェンを力強く回す事は出来ませんよね。
ソーチェンに次いで負荷がかかる場所だと良く分かります。スプロケットもソーチェンと同様に正しく使っていても徐々に摩耗しますので、消耗品と割り切ってある程度の期間で交換する必要が有ります。※チェンの張りが緩すぎると、スプロケットの摩耗が加速します。適切なチェンの張りも大事です。
一般的な目安としては、ソーチェンを2本交換する毎に、スプロケットも交換する事が望ましいそうです。
このタイプのスプロケットで有れば、目視で確認可能ですので、すり減っているようで有れば交換なり点検をお勧めします。すり減ったスプロケットを使用しているとチェンとガイドバーも急速に摩耗してしまいます。
スプロケットを単体で注文すれば4千円前後です。ご自分で交換も可能ですが、特殊工具が無いと苦労する箇所や、取り付けの際には適切なトルク量で締め付けた方が良いので、別途工賃は掛かりますが、専門店に頼む方が無難かと思います。